2019年10月09日
「道」
学業を終え、周囲に流されるままに就職をした会社は、大手のビジネスシューズの製造販売会社でした。 私は、多様なお客様のご要望を伺いお客様の暮らしに適う靴を何百という種類の中からご提案し購入いただくのが仕事でした。その人の人生を支え歩く靴は、日々を重ね再訪いただくときには、違う顔付きの靴に変わっています。履き主に適った歩き方、使い方、保管の仕方によって靴は変わる。不思議に感じたのを覚えています。そんな日々を過ごす私に大きな転機が訪れたのは、会社からの転勤の打診でした。 大阪の地を離れ東京へ。家庭の事情で大阪の地を離れる事の出来ない私にとって受け入れられない事でした。想い悩む日々の中、脳裏を過ったのは数年前に他界した父の葬儀でした。お恥ずかしい話ですが、当時の私は父を亡くした悲しみで葬儀の準備をする母を何一つ手伝うことが出来ませんでした。一番辛く悲しい思いをしている母にセレモニースタッフの方は寄添いしっかりサポートをして下さいました。葬儀を終えた後「いいお葬式やったね」と安堵の表情を浮かべながらポツリと呟いた母の言葉が蘇っては木霊の様に響きました。いつしか母に寄添い支える葬儀社のスタッフの姿が自分と重なり大切な方を亡くし悲しみに暮れるご遺族様を励ましている自分がいました。「人に接する仕事をしたい」 高校を卒業するときに只、一つ心に誓っていたことです。靴を通じ人様の人生を垣間見て人様の人生を支えてきた様に思います。 今、自らの人生を考えた時にも、人の人生に携わっていきたいとの思いが「葬儀」の世界へ導いてくれた様に思います。父の葬儀を通じ、あの時の母や私と同じ思いの方を支えたい。今は、そのことが私の「生き甲斐」であり「遣り甲斐」です。今は未熟で不甲斐ない思いの毎日ですが、いつか必ず立派な葬儀スタッフになり懸命に人生を駆抜けた故人様の最期をご遺族様を支えていきたい。父が導いてくれたこの「道」で・・・。