「メッセンジャー」
真剣な眼差しのご遺族様に向き合い真摯に頭を垂れ、耳を傾ける。
その言葉は、大切な故人様との思い出に心を満たす言葉が溢れては零れてきます。
その零れ落ちる一粒の言葉を決して漏らさぬよう、必死に受け止める僕が居ます。
感情が形を成した豊かな表情から発する一つひとつの言葉は、どんな表現であっても愛情に溢れています。
飲食業界で長年働き料理をテーブルに運ぶ日々を送っていた僕には、想像も出来ない表情や言葉がそこにはありました。
食べることが好きで綺麗に盛られ一皿に夢を讃える料理は、料理人からのメッセージであり、その思いを届けるメッセンジャーが僕の仕事でした。
そんな僕に向けられる笑顔に幸福を感じていたのも事実です。
しかし世界を恐怖に陥れたパンデミックが僕の人生を変えました。
常連のお客様方の足も遠のき「笑顔」という遣り甲斐も創意工夫を繰返し様々なメッセージを円卓へ届ける料理人の方の想いも萎んでいきました。
やがて店は営業を断念。
それ迄の全ての様な毎日は忽然と僕の人生から消えてしまいました。
途方に暮れる僕に先輩が紹介をして下さったのが後に都島葬祭で僕のブラザー(指導員)と成る北田マネジャーでした。
「やる気があるなら」の言葉に「出来るだろうか」と不安な想いが過りましたが「違う世界を見てみたい」という好奇心から飛び込んだ葬儀の世界でした。
不安に向き合う日々で出逢い、向き合うお客様は全てが真剣でした。
嘘のない世界が此処にありました。 彩るのは、故人様を想う「心」だけでした。
人生経験豊かなお客様には及ばずとも自身が持てる「経験」と「知識」を総動員し大切な御葬式をお手伝いしています。
全ての儀式を終え小さな壺に納まり、懐かしいご自宅へお帰りに成った故人様を大切にご安置した時お客様から掛けられる言葉は誰かのメッセージを運び続けた僕の人生であると感じました。
今、僕はご遺族様から故人様へ届けられた彩溢れるメッセージを届け、感謝と笑顔を返された故人様のメッセージを届けています。
これからも・・・。